はじめに
携帯レトロゲーム機のPowkiddy RGB30、とても素晴らしいです。
今まではMiyoo Mini V2(以下MM)を使っていました。まずもってこれは素晴らしいレトロゲーム機で、ひとつの時代を作ったと言っても過言ではないとおもいます。このはてなブログで、Miyoo MiniのOS更新のログも当時書きまして、わりと今でも読んでもらっています。
Miyoo Miniはその後、画面の大きいMiyoo Mini Plus(MM+)も発売され、これもとても人気のある携帯レトロゲーム機として名を馳せています。今回、画面の大きなMM+にしてみようかなともおもったのですが、検討の結果Powkiddy RGB30にしました。
これは当たりマシンだとおもいます。個人的な感想ですが、MMで感じた感激と同じか、さらに上回る感激です。
まず、どうしてRGB30を選んだのか、かいつまんでご紹介します。
類似ゲーム機との主なスペック比較
まずのきっかけは、MinUIというOSでの対応ゲーム機が増えていることでした。以前に書いた記事は、MMとOnionOSの組み合わせを主に紹介しましたが、実際にはMMとMinUIの組み合わせに移行しました。いろいろカスタマイズはできないOSですが、すごく使い勝手がよいのです。
画面サイズ | 本体重量g | 無線 | エミュ | MinUI | ビルドQ | 出荷開始 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Miyoo Mini | 2.8 | 106 | なし | PS1まで | ◯ | 標準以上 | 2022-01? |
Trimui Smart | 2.4 | 100 | WF 2.4GHz BT4.0 | PS1まで | ◯ | ややチープ | 2022-10-15 |
Anbernic RG35XX | 3.5 | 165 | なし | PS1まで | ◯ | 高い | 2022-12より前 |
Miyoo Mini Plus | 3.5 | 162 | ワイヤレス通信? | PS1まで | ◯ | 標準以上 | 2023-04中旬 |
Powkiddy RGB30 | 4 | 207 | WE BT | 64 DC PSP | very alpha | やや心配 | 2023-09上旬 |
このようにMinUIがつかえるマシンを並べてみると、2022年のMM発売以降、ざっくりとは「大画面化」と「無線通信対応」が進んでいることがわかります。また、ここしばらくSoCが強くなって、64/DC/PSPまでなんとか動くようになってきていることがわかります。ビルドクオリティが評判のAnbernic RG35XXを使ってみるか、ワイヤレス通信+SoCが強くなっているPowkiddy RGB30にするか迷いました。
決め手になったのは、Pico-8界隈の有名人で、ゲーム作成動画もたくさん出されているChristian先生の動画でした。
大きなポイントは
- pico-8がネイティブで動く(エミュレータのfake-08ではない)
- SDカードを抜き差しせず、無線でつないでデータをコピーできる
でした。MinUIは「very alpha」とのことで期待できません。当初の目論見からズレていってますが、上記2点は「MMで改善されるととても嬉しいこと」だったので、やむを得ません。
リンク(主な情報源)
主だった点について解説(作業ログ)を書いておこうとおもうのですが、まずはリンクを集めておきます。
現時点ではまだ日本語の情報が少ないです。英語なら、わたしがあらためて書くより100倍素晴らしい記事がたくさんありますが、なかなか検索でひっかかってきません(ノイズが多すぎ……)。
そこでまず、主だった情報源と、英語の場合は概要をメモしておこうとおもいます。
日本語の情報源
まずは公式。
とんちき録さんは、機種選定のときにすごく読ませていただきました。
- 中華ゲーム機「Powkiddy RGB30」販売開始|新色2カラー追加
- 中華ゲーム機「Miyoo Mini+」レビュー|人気モデルのアップグレード版
- 中華ゲーム機「ANBERNIC RG35XX」レビュー|低価格- ・コンパクトモデル
- 中華ゲーム機「TRIMUI SMART」レビュー|重さ100gのコンパクトモデル
- 中華ゲーム機「Miyoo Mini」レビュー|画面占有率の高いコンパクトモデル
- 【2023年上期】中華ゲーム機の売れ筋ランキングを発表!|カテゴリ別の人気モデルはこれ!
その他レビュー記事
- 【Review】Powkiddy RGB30 スクエア・スクリーンはマルチエミュレーターには理想的かも | NitRo Blog
- 【レビュー】正方形ディスプレイで一点突破『Powkiddy RGB30』 | yoshives
- 『POWKIDDY RGB30』レビュー | 720×720解像度の4インチ画面搭載、実用的な性能の携帯ゲーム機 - TikGadget
- 中華携帯ゲーム機に初挑戦。正方形ディスプレイの「Powkiddy RGB30」でX68000を動かそうとして色々ハマるの巻:X68000も動かせるらしい!未確認ですが、要チェックです。
英語の情報源
まずは公式。
そして、わたしのなかで決定版の紹介動画。
- Powkiddy RGB30 | HARDWARE REVIEW - YouTube:pico-8で著名なChristian先生の解説動画
購入後の、使い方の紹介記事など。
- PowKiddy RGB30 Starter Guide - Retro Game Corps:スターターガイドの決定版。かなり詳しい。これをGoogle翻訳やChatGPTで訳して読めば、かなりのことがわかります。
- PowKiddy RGB30 Starter Guide - The GamePad Gamer:検索するとこちらが先に出てくるんですが、基本的には上記記事へのリンクです。
- GitHub - JustEnoughLinuxOS/distribution: Home of the JELOS Linux distribution.:JELOS(デフォルトでついてくるOS)を配布しているGitHubリポジトリ。
- JELOS Wiki:JELOSの公式Wiki。スターターガイドで概要をざくっと把握して、インストールなど、具体的な作業は公式Wikiを参照するのがおすすめです。
もうひとつの選択肢、ArkOSについて。
- Jelos or Arkos for rgb30? - reddit
- JELOSとArkOSについて、すごく詳しく比較してくれています。ざくっとまとめると:ArkOS:エミュレータやユーティリティを個別に管理。モジュラー式で小さな更新が多い。JELOS:機能が統合されており、全体の更新が一度に必要。使いやすいインターフェースを持つが、更新のサイズが大きく、アップデートも頻繁。
- Powkiddy RGB30 Ultimate Setup Guide - ArkOS, Roms & Pico-8, Box Art and Tweaks - Joey's Retro Handhelds
- ArkOSのセットアップガイド。概要をつかむには良いが、内容は少し分かりにくかった(個人の感想です)。
- Home · christianhaitian/arkos Wiki · GitHub
- ArkOSの公式Wiki。少し構成が掴みづらいところもありますが、内容はすごくわかりやすいです。
さらにすごい、Portmasterについて。
- GitHub - christianhaitian/PortMaster
- ArkOSのchristianhaitian氏の作成している、PortMaster。JELOSやArkOSから利用でき、さまざまなゲームを携帯レトロゲーム機で動かせるようにセットアップしてくれるツール。ゲームの本体は別途買う必要があるものと、買わなくて良いものが混じってます。たとえばDevilutionX(Diablo1)が動いたりします。
個人的に大好きなMinUIについて。
- GitHub - shauninman/MinUI: A custom launcher for the RGB30, Trimui Smart, Miyoo Mini(s),and Anbernic RG35XX with more to come...:MinUIの公式リポジトリ。いちばん気に入っているOSですが、「無線でデータを送れない」「pico-8をネイティブで動かせない」ので見送っています。shauninman氏はすごいので、待っていると解決されているような気がするので、楽しみにしています。
- GitHub - shauninman/Moss: MinUI OS Subsystem is a pared down fork of JELOS used as the foundation for MinUI on the RGB30.:RGB30でMinUIを動かすにはMOSSが必要。
セットアップガイド
まずは全体像
まずはソフトウェア構成の全体像です。
ざっくり言って、OS / Frontend / Emulator のレイヤーに分かれています。
RGB30で主力のOSは、JELOSかArkOSだとおもいます。これらは一番下のレイヤーで、その上には共通してEmulationStationが走っています。さらにその上にRetroArchやその他ソフトウェア(たとえばPICO-8)が動いています。
人間の目に触れるのはEmulationStationのレイヤーなので、EmulationStationのテーマが同じなら、JELOSでもArkOSでも見た目がほとんど同じになるみたいです(とどこかに書いてありました)。
上述の、Jelos or Arkos for rgb30? - redditでも解説されているように、JELOSの場合はJELOSを設定すると、EmulationStationとRetroArchも設定しようとします。ArkOSの場合は、ArkOSはArkOSで設定、EmulationStationはEmulationStationで設定、RetroArchはRetroArchで設定、とレイヤーごとに設定しようとする傾向があります。
いまのところ、JELOSが楽だな〜とおもいますが、そのぶん融通がきかなかったり、依存関係でハマったりするんだろうなという気もします。
MinUIは、MinUIがOSとFrontendのレイヤーまでカバーしている感じです。
設定する前のオススメ事項
RGB30の購入時には、独自カスタマイズされたJELOSがついてきます。シェーダやベゼルなど、かなりいい感じに調整されています。しかしながら、この独自カスタマイズJELOSは後で入手することができません。設定を変えたり壊してしまうと、復元できないのです。
サポートに1週間ぐらいかけて交渉しましたが、ダメでした
わたしはできなかったのですが、付属のSDカードをバックアップしておくと良いのではないかとおもいます。
macOSの場合、ディスクユーティリティ.appを用いるか、Terminalからddコマンドでコピーしておくと、すごく良いんじゃないかとおもいます。
続報:2024-01-10記 カードのなかに
JELOS-RGB30.aarch64-20230612-BASE-EN-20230919.img
といった名称のファイルがあり、これをEtcherでSDカードに書くことで復活させられました。 ただし、OSアップデートなどすると、設定がいろいろ消えてしまいます。
JELOSの設定概要
JELOSの場合の、基本的な設定についてメモしておきます。細かい設定はキリがありませんが、最低限は下記かと思います。
WiFi設定
Network Settings > Enable Network をONにし、WiFi SSIDに入って、接続するWiFiを選びます。そしてWiFi Keyを入力し、Network Settingsを抜けます。抜けたタイミングで確定となり、WiFiに接続しようとします。
起動してすぐは、WiFi SSIDがうまく動かず、接続先が出てきませんでした。しばらくしたら(計っていませんが10分ぐらい?)接続先が出てきたので、時間薬っぽいです。
SambaとSSH
WiFiにつながったら、Network Settings > Enable SSH / Enable Samba をONにします。とくにSambaは、SDカードを抜かずにデータをコピーするのにとても便利です。
Network Settings > Enable IPv6 は気まぐれでONにしていましたが、不要かもです。
システム設定
System Settings > Timezone を ASIA/TOKYOに変えます。 System Settings > Root Password を任意のパスワードに変えます。 安全を優先するならSystem Settings > Rotate root password をONにします。
とりあえずこれぐらいやっておけば、最低限のスタートラインに立てます。あとの設定はお好みで。
システムごとの推奨設定
システムごとの推奨設定は、下記のサイトが詳しいです。
POWKIDDY RGB30 STARTER GUIDE - Recommended settings
とりあえずここのオススメに乗っかって、そのあと好みに調整するのが良いのではないでしょうか。
Bluetooth接続の設定
Controller & Bluetooth Settingsで、Bluetoothのコントローラやヘッドフォンの設定ができます。
Enable BluetoothをONにし、Pair a Bluetooth Deviceでペアリングします。
ワイヤレスコントローラは当然のこと、ヘッドフォンも接続でき、ちゃんと音が出ます。Apple AirPods Proはダメでしたが、BOSE QC35 IIはイケてます。
購入前に調べてもなかなかわからなかったんですが、ワイヤレスでヘッドフォンから音を出せて、これはすごく良いです。
その他の疑問と回答
買う前や、設定しながら「これはどうなんだろう」とおもったことたちです。
カードスロットが2つあるのは便利?
これはすごく便利です。本体の電源が入った状態で、ROM側のカードを抜けるのがイイです。Miyoo Miniだと、カードを抜くとハングアップしてしまって、裏蓋を外してケーブルを抜く必要があり、めちゃくちゃめんどくさかったんですが、解消しました。
Bluetoothヘッドフォンは使える?
使えます。買う前に調べていたとき、あんまり明確に書いてある記事を見つけられなかったのですが、使えます。ただし、うちで試した範囲だと、BOSE QC35 IIは使えますが、AirPods Proはダメでした。ペアリングはできますが、うまく音が出ません(やりかたが悪いのかも)。
外付けキーボードは使える?
たぶん使えます。まだ試していません。
ArkOSとJELOSでROMカードを共有できる?
できます。ArkOSは、設定でROMカードのスロットを指定する必要がありますが、指定すればOKです。
ArkOSはどう?
良いと思います。パフォーマンスが良いという話もあり、最近はたいして変わらないという話もあります。レイヤーごとに設定が分離されていて明確だそうです。
使ってみたのですが、ROMカードスロットの指定でミスると起動しなくなり、「JELOSのカードを入れて再起動→ArkOSのカードに入れ替えて再起動すると、起動するようになる」という謎挙動があり、めんどうになってやめてしまいました(個人の体験・感想です)。
ArkOSが起動しなくなったんですけど
ROMカードの設定をミスったときなど、ArkOSが起動しなくなることがあります(ありました)。いったんJELOSのSDカードを入れ、起動してから終了し、ArkOSのSDカードを入れて起動すると、無事に起動します(することがありました)。いったいなんなんだろう。
MinUIはどう?
すごく良いと思います。大好きです。JELOSと作者は同じなのかな?ただし、カードスロット1にMOSSを入れて、カードスロット2にMinUIを入れて、など煩雑です。まだアナログスティックを認識していません。PICO-8がネイティブで動きません。DevilutionXはたぶん動きません。Arcade系は自分でExtraをつくらなければなりません。
といろいろまだ道半ばで、本格的には使っていません。アップデートに大いに期待したいところです。
MAMEのROMが動かなくなりました
さっきまで起動していたものが、起動しなくなることがあります(ありました)。X
ボタンを押してコアを変えると動きます。(いったいなんだったんだろう。デフォルトコアを変えてしまったのかな?)
DevilutionX(Diablo1)は動きますか?
動きます。これはすごい。
日本語化は、一瞬うまくいったんですが、またうまく行かないです。謎。英語でもたいして困らないので(むしろ字が読みやすくていい)ので、まあいいか、ですね。
おわりに
画期的な携帯レトロゲーム機、Powkiddy RGB30の情報と個人的な体験を共有しました。Miyoo Miniや他の携帯レトロゲーム機と比較して、RGB30は大画面と強力なSoC、そして特にワイヤレス通信やPico-8のネイティブ対応など、多くの進化点が見受けられます。
また、JELOSとArkOSの違いや、MinUIの現在の状況など、各OSにも触れました。レトロゲーム機に興味を持つ方々や、購入を検討している方々に役立つことを願っています。
Powkiddy RGB30は単なるレトロゲーム機を超えて、多機能な携帯エンターテイメントデバイスとしての地位を築きつつあります。これからもこの分野の進化を楽しみにしています。読者の皆様にとっても、この携帯レトロゲーム機と楽しい時間を過ごされますことを心から願っております。
環境
- JELOS 20231023 3f250f7
- Powkiddy RGB30
- macOS Sonoma 14.0(23A344)
- MacBook Pro (14-inch, 2021)