はじめに
キーキャップの分類には、
- 形状:Cherry、DSA、XDA、MDA……
- 素材:ABS、PBT……
- 印字:レーザー刻印、昇華印刷(Dye-Sub)、2色成形(Double-Shot)
などいろいろな切り口があります。ここでは形状に着目した分類をまとめました。
形状の名前は似たものが多く、すぐわからなくなってしまうんですよね……
形状による分類(結論)
形状の名称はほんとうにたくさんあり、新しい形状も増えています。よく耳にするものを表にまとめるとこのようになろうかとおもいます。
高さ | 傾き | Spherical | Cylindrical | Flat |
---|---|---|---|---|
High | Sculputed | SA, MT3 |
OEM | -- |
↑ | Flat | -- | -- | -- |
Medium | Sculputed | DSS, KAT, MDA, MCR, MG, XVX |
Cherry, DCS |
-- |
↑ | Flat | DSA, XDA, ADA, NP |
-- | G20 |
各プロファイルの主な特徴や歴史について、下記に記します。
- ほかのベースとなる基本5プロファイル
- 基本5プロファイルから発展したもの
に大別してご紹介します。
まずは基本5プロファイル
歴史的経緯や、ほかのプロファイルから参照されていることから、これら5つが基本プロファイルとおもわれる。
Cherryプロファイル
Cherry MXスイッチでおなじみの、ドイツCherry社が開発した形状で、今でも人気が高い。Sculputedのなかでは低いほう。キートップはCylindrical。OEMを低くしたような形状で、丸みの少ないエッジの立ったデザイン。
Cherry社やGMK electronic design GmbH(通称GMK)社などが製造。1980年代から存在するプロファイル。
OEMプロファイル
市販のメカニカルキーボードのキーキャップの多くはOEMプロファイル。
Cherryプロファイルを少し高くしたような形状でSculputedで、キートップはCylindrical。
やや重厚な印象のデザイン。ただし厳密な規格がなく、ブランドや製造工場により若干高さなどが異なる。
SAプロファイル
キー上面までの高さがあるSculputedで、キートップはSpherical。SculputedではなくFlatなセットもあるらしい。丸みを帯びたレトロな印象のデザイン。
Signature Plastics社が製造。
もともとはSpherical keycaps with the same profile across All rows(全ての列で同じプロファイル、キートップはSpherical)の意味でSAと名付けられた。後年Sculputedにデザインし直されたが、名前は変えなかった。Ref. Signature Plastics SA family - Deskthority wiki
XDAプロファイル
全行で形状が同じ(Flat)で、DSAより全体に高い。キートップはSphericalだが、DSAより平らで、面積も広い。
現代的な印象のデザイン。
DSAプロファイル
Distributed Structure Aestheの略だという説と、DIN規格(Deutsches Institut für Normung" Standard)に適合したSphericalキートップが全面に展開(All)という説、があるようです。
つぎに発展形プロファイル
MT3プロファイル
背が高い(High)Sculputedで、キートップはSpherical。設計者のMatto3o氏は「SAのクローンではないのだ」と強調。
SAは見た目はよいがABSでダメ、東プレのHi-Proキーボードは全体としてよいがキーキャップはいまいち。そこで、2015年01月に構想しはじめ、手作業でデザインし、2017年04月にリリース。
ADAプロファイル
背は低く(Medium)、Flatで、キートップはSpherical。
Thinkpadを愛する人たちが作ったレトロな形状。DSAに似ているが、全体に丸みを帯び、キートップの丸みも深い。わりと新しい(2020年ごろ?)。
MDAプロファイル
MelGeek社の開発したプロファイル。SAを下敷きに、各行の高さや傾斜の変化を大きくした形状。丸みを帯びた可愛い印象のデザイン。
指の動きにあわせてくぼませ、キートップもSphericalで広いため、指に吸い付くようなタッチに。MelGeekのブログでの解説が詳しい。
MelGeekが、XDAのキートップの広さを活かしつつ、SAの傾きを参考にして開発したのでMDA、なのではないかと想像していますが、証拠は見つかっていません。
MCR,MGプロファイル
写真はMDAプロファイルご参照。
MelGeek社の開発したプロファイル。あまり解説を見つけられないのだが、どうやら
- CherryのMelGeek版→MCR
- SAのMelGeek版→MG
- SA+DSAのMelGeekアレンジ→MDA
ということらしい。
XVXプロファイル
Sculputedで、キートップはSpherical(Cylindricalもあるのかな……?)で、キートップの面積は広め。
2022年7月ごろに登場し始めた。CherryとXDAのハイブリッド。
MDAとほとんど同じで、最上列だけが低い。MDAとして売っているもので、実際にはXVXであることも。
個人的な好み
KeyboardioのAtreusという40%キーボードを愛用しています。
全てのキーの幅が同じで、修飾キーや - " ~
キーが最下段に集まっており、なかなかキーキャップの選択のハードルが高い、という条件付きではありますが、個人的な好みは MDA または XVX です。
気に入っているところは、
です。他のプロファイルもまあまあ試しました。
- XDAは、キートップ面積が広いのは好きだが、背が高い。2mmぐらいでこんなに気になるものか、と驚くほどでした
- XVXは、全体の形状は好きなのですが、修飾キーと
- " ~
キーの形状があわない。
いまのところ、MelGeekが初期に出した、MDAプロファイルのBig Bang v1がベストです。- ~
キーはなくて、無刻印で妥協していますけれども。
分類の用語
高さ:High - Medium - Low
キー自体の高さ。おおまかにHigh - Medium - Lowとわけられる。厳密にどこからHighとは決まっていないようだが、ざっくり15mm前後だとHigh、8-10mm前後でMiddle、5mm以下でLowと呼ばれる印象。
[!hint] HighのかわりにTallと表現されることも。LowのかわりにShortと表現されることも。3分類ではなく、2分類でTall - Short, Taller -Shorterと表現する流儀もある。かなり文脈依存(書き手の好み)。ここではなるべく標準的とおもわれるH - M - Lを採用した。
傾き:Sculputed - Flat
キーの高さが、行によって一定なのがFlat。行によって高さが異なるのがSculputed。通常は、奥側と手前が高くなっており、指を動かす距離が少し短くなる。
Flatは、Uniformと言うことも。Sculputedは、Sculpturedということも。見たところ、どちらかというとSculputed - Flat が一般的な様子なので、こちらを採用した。日本語のページだと「スカルプチャード」と表現していることが多いが……
キートップ:Spherical - Cylindrical - Flat
下図を見てもらうのがいちばん。キートップのくぼみ方がちがう。漢字ならさしづめ 球 - 筒 ‐ 板 か。
キーキャップを買えるところ
- Amazon:モノによって配送が速いのはうれしい
- メルカリ:たまに掘り出しものが見つかる
- Keyboard - 遊舎工房ショップ:自作キーボード専門店のオンラインショップ
- TALPKEYBOARD SHOP:日本で初めてのキーボードパーツ専門のネットショップ
参考になるリンク
下記などが、キーの分類について詳しい。
- キーキャップの湯のお誘い ver2 - 自作キーボード温泉街の歩き方
- キーキャップについて - 株式会社アーキサイト
- キーキャップの素材と形状まとめ - Sansan Tech Blog
- Keycap Profiles: The Ultimate Guide - TEKSBIT
- Overview of Different Keycap Profiles - The Keeblog
- Keycaps.info
また、この記事は、下記のアレンジ版です。
こちらのリンクで最新情報が更新されている可能性があります。
おわりに
キーキャップの分類とその特徴についてまとめました。キーキャップもまた、タイピングの快適さや楽しさを大きく左右する要素です。各プロファイルの特徴をおさえると、最適なキーキャップを選べる確率がグッと上がります。この記事は、個人的にリファレンスが必要なので作成したものですが、もし皆さまのキーキャップ探しの一助になれば幸いです。