虎(牛)龍未酉2.1

記録帳|+n年後のジブンが思い出せますように……

投函されなかった手紙:Finardry讃

これは、投函されることのなかった手紙である。

先輩は若くして……戻らぬ人となった。良い奴ほど早く死ぬ。

「良き人の思い出を記憶に残し、良きゲームを遊ぶ。それが残されたものの役割である」
しらんけど。

それでも残されたものがある。語り合った日々、そしてゲーム。最近出会った『Finardry』が先輩を思い出させてくれる。だからここでその魅力を書いてみたい。

Hさん、こんにちは。

すっかりご無沙汰しています。突然の手紙で驚かせてしまったかもしれません。先月、ご入院されたと伺い、心配しております。ご体調はいかがでしょうか。ふだんの生活から離れて、少し休息の時間ができたのではないかと思います。せっかくなので、もしよければ、昔の楽しかったことを思い出してもらえるような話をしたく筆を執りました。

Hさんとは大学時代、ゲームの話をたくさんして、とても楽しかったことをよく覚えています。ドラゴンクエストウィザードリィウルティマ、マイト・アンド・マジック……あの頃すでに「懐かしいゲーム」とされていたものも含め、何度も語り合いましたよね。住むところが離れていたので、それぞれでダンジョンを探索し、敵と戦い、リセットボタンを押して、何度も挑戦して。登場したての「電子メール」で情報交換したのも輝かしい思い出です。

最近『Finardry』というゲームに出会いました。先輩ならご存知かもしれませんが、ウィザードリィと初期のファイナルファンタジーの要素を融合させたような作品で、なんとも懐かしく、そして現代的な快適さも持ち合わせているんです。しかも無料。

Finardryの魅力

ゲームのメカニクスウィザードリィに基づいていますが、絶妙な難易度に調整されているんです。全滅してもすぐにキャッスルに戻れる仕組みになっています。昔のように、キャラクターが迷宮に放置されることがなく、リセットや蘇生失敗に悩まされることもありません。ウィザードリィらしいシビアさがない、という意見もあるかもしれませんが、じっさいに遊んでみると、現代のゲーム感覚では、まさにちょうどいいさじ加減だとぼくは思いました。

戦闘システムはFF風のサイドビューで、懐かしい雰囲気を醸し出しながら、すっっっっごくテンポよく進行します。前衛と後衛に分かれており、職業をバランスよく配置する妙味はそのままに、サクサク遊べます。単に見た目がおもしろいだけではなく、「緊張感」と「テンポの良さ」を両立させる、格別のアイディアだと感じました。

アイテム管理もすごく楽になっています。昔のウィザードリィのようにキャラクターごとにアイテムを持たせるのではなく、共通インベントリ方式で、必要なアイテムを簡単に使えます。重要アイテムや装備品は……ネタバレし過ぎてもおもしろくないので略しますが、これまた現代的な感覚で遊べる軽さと、レアアイテムを見つけたときの興奮とのバランスがとてもうまく調整されています。

もちろんダンジョン内の「隠し扉」や「玄室」などの仕掛けも健在です。手描きでマップを作る必要もなく、自動でマップが埋まっていくので、探索の楽しさを存分に味わいながらもストレスフリーで進められます。

レベルアップも宿屋に戻らなくても戦闘後に自動で行われるため、テンポが途切れることなく進みます。探索や戦闘に集中でき、ダンジョンを攻略するスピード感が生まれます。また、キャッスルに戻ればHPやMPが全回復するため、回復アイテムの心配もいりません。

あらゆる側面において、ウィザードリィ好きの琴線に触れつつ、現代的な遊びやすさを反映させている、作者の天才的なバランス感覚にぼくは打ち震えました。とくに全体を通じてとても注意が払われている、テンポのよさやスピード感覚は、あらゆるゲームが真似してほしい、とおもうぐらいです。

あまりに感激したので、Linuxベースの携帯ゲーム機で、大きな画面で遊べるよう『Finardry240』という調整版をつくり、原作者の許可を得て配布しています。このあたりの話も熱いので、またお会いしたときにでもぜひお話したく願っています。

『Finardry』のススメ

先輩も、いまなら少しゆっくりと過ごせる時間があるのではないでしょうか。このゲームなら、懐かしい思い出とともに、気軽に楽しめる冒険を提供してくれるとおもいます(しかも無料。2度言いました)。細切れに少しずつでも遊べますし、着実に攻略を重ねていく楽しさを味わっていただけるはずです。さきほど触れた携帯ゲーム機なら、病室で寝転がりながら遊ぶのにもぴったりです。

ご無理なさらず、気分転換としてお試しください。そして、ぜひまた感想を聞かせてください。元気な姿でお会いできる日を楽しみにしています。あの頃のように、また一緒にゲームの話で盛り上がれる日を心待ちにしています。

それでは、どうかゆっくりとお休みになってください。ご体調が戻るのを心から願っています。

HS拝

追伸、10/10にはFinardry作者の最新作、Dungeon Antiquaが出ます。これはぜひリアルタイムで情報交換しながらあそびたいですね!

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