015:KDDI30%オフ、Wi-FiスポットNo.1

今朝はめずらしく満員の地下鉄に乗っていて、「へげ」となりながらふと目の前のおじさんの新聞を見たら「KDDI、スマートフォンの通信料金を最大30%値下げ」と書いてあった。ほーと思って目を上げると、ソフトバンクの広告が電車の壁に貼ってあってそこではクマだかイヌだかわからない、たぶんイヌであろうと想像されるところのクマ的生き物が「Wi-Fiスポット数No.1」的なことを言っていた。
わたしを知っている人はよくよくご存知の通り、わたくしは普段新聞というものに触れないので、「KDDI、スマートフォンの通信料金を最大30%値下げ」とかいう記事を見るだけでも大変に新鮮な気持ちになれる。最大30%ってなんだよっていう。最大ということは普通は30%ではないのだな。普通はどれくらいなのだろうか、統計的に示してくれよとか、どうせニュースリリースそのまま書いたんだろうがよとか、余計な悪態をつきたくなるが、そういうことも建設的ではないので、カバン持ちとしてずっと同行しているうちの若いのに「この2つはどういうことを示しているのか」と問うたりして憂さを晴らすのである。
憂さ晴らしはともかく、疑問は、なぜKDDIはよりによって今のタイミングでこの中途半端な・・・キャッチコピーとしてはインパクトのありそうな「30%」でも実質はそんなに下げないんだろうなと思わせてしまう・・・記事をニュースリリースとして出して、記事にしてもらわないといけないのか。なぜ最初から値下げしてシェアを獲得せずにいまさら中途半端な値下げをしているのか。いろいろと背景を想像(妄想)してしまった。
数字は一年ぐらい前に調べて、詳細は忘れてしまったけど、そもそもが3大携帯電話会社の、加入者数の純増・純減人数でいくと、ドコモが大きく純減し、ソフトバンクだけが純増している、KDDIが増えたり減ったりしているけれどもここしばらくトータルとしては負け気味、というのがこの数年の大まかなトレンドであったはずだ。詳細はどうかどこかで調べて頂きたい。しかしこの「純増純減」には大きな罠があってそれはなにかというと、ドコモの分母が圧倒的に多きすぎて、純増順減数ではソフトバンクは勝っているものの、加入の総人数でいくとドコモがまだまだ安泰という状態がしばらく続いていた、とざっくりと認識している。
ところが、いよいよソフトバンクの分母も大きくなってきて、いよいよドコモ・KDDIに総加入者数ベースで追いつくことが想定の範囲内に入ってきたのが、この3年ほどの流れであったと理解している。
一方で、収益ベースで考えると、現在のところはソフトバンクが圧倒的に勝利を手にしているという。なぜか。それはiPhoneを代表とした「データ通信料金」の固定収入部分が大変に強力な基盤として働いているからである。
じぶんもスマートフォンを使っているからよくわかるけれども、出張生活でデータ通信をしていると、パケット量でまじめに計算した通信料はあっというまに20万円、30万円を越し、割り引かれてけっきょく5千円ぐらいのところに落ち着くのが相場というものである。もともとのパケット代の設定が高すぎるんじゃないの、単に割り引かれている気がしているだけじゃないの、という気もするけれども、まあこの便利さと比較すると、商売柄五千円ぐらいのことは已むを得ないかなあと思ってしまう。そしてそれがゆえに、五千円分の価値提供をしていない新聞なんて読む価値がないよなということで購読を取りやめたりしてしまうわけだけれどもそれはともかく。
さて加入人数と収益の話に戻る。世の中的にはソフトバンクのとくにこの3年の躍進を見て、やっぱりiPhoneつよし。ということになっている。純増数しかり。収益の快調さしかり。そしてその分析は基本的には当たっていると思う。そしてついに2011年の末だか秋だかそれさえも忘れてしまったが、このソフトバンク一人勝ち状態に対抗するためにKDDIは立ち上がり、iPhoneの提供に踏み切ったのであった。
が、(たぶん)誰もが思ったのはなぜKDDIはソフトバンクより値段設定を下げなかったのか。値段を下げることが正義だとは思わないけれども、それにしたって負けてる戦をひっくり返すために起死回生の一発を打ったにしてはなにも武器なく場内乱入とはこれいかに。ほとんど苦し紛れに「通話品質が良い」とか強弁していたけれども、SMSが使えないとか、データ通信と通話通信が両立しないとか、弱点が多いままなんでプライシングにも目玉なく戦おうとするのか。
こっからは推測に推測を重ねているので妄想ですが、想像される理由は2つ。(1)あまりにも儲かってないから投資余力がない。値引きでシェア獲得するまで我慢する体力もなければ、コストダウンするための投資をする余力もない。(2)Appleに高い値段でiPhoneを買わされてしまった。だって明らかに苦しい状況でAppleに対しては売ってもらえるならなんでもします状態の交渉をしたのであろうことは想像に難くない。価格面で譲歩したのか、台数縛りで譲歩したのかはわからないけれども、そうとうタイトな条件下での契約に至ったのは間違い無いだろう。とゆうことはあまりにも出費リスクを抱えるようなプライシングはできなかったのであろう。
それでなんで今のタイミングで通信料値下げの意思決定をしたのか。妄想は2つ。(1)経営陣の意思決定能力が落ちてる。こんなもん最初から負け戦なのに、今になって数字が取れてから意思決定しているということであれば、経営陣が経営じゃなくて管理ばかりしている状況に陥っていることが想像される。(2)3社目の参入の交渉が大詰めに入っていて、台数縛りか価格縛りのどちらかでハードな結論を出さざるを得ないように牽制している。Appleの契約スキームは具体的には知らないけど、ビジネスの世界では「価格を決めれば台数が決まらず、台数を決めれば価格が決まらない」という「不確定性原理」がある。Appleのビジネス思想のミソのひとつは、エンドユーザーに対して価格を決める一方で、流通や調達先に対しては強く台数を決めることで、ビジネスの不確定性原理を回避している(しようとしている)ことなのだ。話が遠回りになったけど、購入価格面で交渉すれば、台数面では譲歩せざるを得ないので、販促費が膨らんでエラいことになってしまう。そういう交渉のアヤを複雑化させようというコスい意図が見え隠れするではないか。
まあそもそもKDDIの作戦の打ち手を見ていると市場分析型で、おそらくコンサルタントかマーケターか、あるいはコンサルティング会社出身者かマーケティング会社出身者が発言権・意思決定権をもっているものと思われ、どうも「これからはスマホらしいですな、うっけっけっけ」「これからはデータ通信料らしいですな、うっひっひっひ」ぐらいの発想でビジネスをしているだけのように見えてならないのだ。
デザイン携帯とか、iidaとか、そういうどきっとするブランド名つけないでよねえ、ということをやっていたあたり(2005-2006年頃)はわりとオモシロイなあと思っていたけれども、iPhoneの登場でデザインレベルではまったく土俵にあがらないことがわかって以来、嵐を広告に使っているのと同期してKDDIは完全に迷走しているように見える。おそらくエッジの効いた着想と行動力のある経営陣が去り、コンサル・マーケター勢力が強くなったのだろうと想像するが、あくまでもこれは妄想に過ぎない。でもあたってそう。
一方のソフトバンクですが、孫さんの携帯電話会社ってヌルってしてて気持ち悪そう、という印象のままずっと使い続けている。基本的には機会があればいつでも去って良しと思っているのだけれども、今のところ去る理由を見つけさせてくれない。Wi-FiスポットNo.1も、じつは大してありがたくなくて(しょっちゅうログインするのでうっとうしいったらありゃしない。ぜんぶ自動で切り替えてつなげてよね。そのあたりの徹底さ加減がAppleと違うんだから、もう)、しかしその宣伝効果たるや大したものなので設定としては素晴らしいなと思うのだ。好きにはなれないけどね。
街のお店のWi-Fiスポットは基本的にタダでばらまいているようで、まあたしかにそれは宣伝費と思えば安いものだ(安くないのかもしれないけど)。iPhoneを出先で使っていて、ログイン画面とあのクマだかイヌだかわからない動物を見るたびに、やるなソフトバンクと思うのだから大した宣伝効果だと思う。それがKDDIとかその他キャリアに対して「だってスマホでしょ?通話しないでしょ?Wi-Fiつながってれば十分だよね?詳しい人はFaceTimeでもSkypeでも使ってタダ電話してよ」っていうスタンスで切り抜けているあたり小憎らしい。常に結果として半歩分ぐらい先を行く設定をしているあたり、組織としての意思決定力と実行力の「気味の悪さ」がでていていいなあと思うんだよね。ヌルってしてそうな気味の悪さとともにね。
ソフトバンクの根本的な成功要因は、(1)「だって電話って言ってる間になくなるサービスでしょ?」というスタンスを一貫していることと、(2)でもその遠大なビジョンはビジョンとして半歩ずつ勝ち続ける間合い取りの絶妙さ加減、にあると思っていて。好きか嫌いかは別として、注目してスタディする(っていうか妄想をふくらませ続けている)対象としてはほんとうにオモシロイなあと思う。
で、わたしとしては、はやく電話とかいう旧世代のサービスがなくなった世の中になってほしい。そうなってほしい理由は、とくにないのだけれども。
 

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