虎(牛)龍未酉2.1

記録帳|+n年後のジブンが思い出せますように……

【11B130】日本の大転換(中沢新一)

日本の大転換 (集英社新書)

日本の大転換 (集英社新書)


 
網野善彦の系譜にわたしゃいるんだなあ、と思ってしみじみした。
なにが素晴らしいって、わたしの個人的テーゼである 1)エコは嫌い 2)朝ごはんは食べない 3)(家では)パンツをはかない のじつに2つに論理的根拠を与えてくれることである。パンツだけはまだうまく説明できない
 

生態研の外部である太陽圏からのエネルギーの持ち込みという技術的な問題が、私たちの実存と一体となっていることがわかる(P.13)

エネルギー革命史
第一次革命:火の獲得と利用。「炉」を中心とする「家」の形成
第二次革命:新石器。農業による余剰生産、交換経済の発達、初期の都市の形成
第三次革命:家の「炉」から冶金の「炉」が発達し金属が作られる。武器の発達が国家を生み出す
第四次革命:火薬の発明。燃える火から爆発する火への移行
第五次革命:石炭を利用した蒸気機関の確立。産業革命
第六次革命:電気と石油。電気はエネルギーであり、電磁波より電波通信技術が発達。自動車産業が発達し、フォード主義が現代的資本主義生産のモデルとなる
第七次革命:原子力とコンピュータ
(P.26)

一神教が重要なのは、それに特有な「超生態圏」的な思考が、西欧においてキリスト教の衰退後に覇権を握った、世俗的な科学技術文明の深層構造にも、決定的な影響を及ぼしているからである(P.32)

「第七次革命」を経た資本主義は、かつてないほど大きな規模に成長をとげたけれど、ますます生態圏との連絡を絶たれた自閉系へと、変貌をとげていったように思われる。外部性への回路を失ったその自閉システムの内部に、莫大なエネルギーをたえまなく供給し続ける「炉」として、生態圏にとってはほんものの外部性である核分裂の「炉」が設置されている。市場という外部のないシステムが生態圏の内部につくられたが、その市場が作動するための「炉」は生態圏外から持ち込まれている。なんというパラドックスだろう!(P.54)

ほかの宗教思想が、さまざまな媒介をつうじて触れ合おうとしてきた超越者が、直接、無媒介に、人間の生態系の秩序に介入することによって歴史が発生するという考えを、一神教は生み出した。(P.61)

経済のもっとも深い基礎には、贈与が据えられているのである。(中略) この贈与性を忘却することによって、交換の経済がすべてを押しのけて、経済活動の全面にあらわれてきた。(P.82)

このリムランド型の文明は、グローバル経済や原子力発電とは、もともとが異質な本性をもっていたのである。グローバル型の資本主義にせよ、原子力発電の設計思想にせよ、中心部の文明にはふさわしい発想ではあるかもしれないが、あきらかにリムランドの文明には適合しない。それを無理矢理に適合させようとすれば、日本文明は土台からの破壊にさらされていくことになるだろう(P.97)

エネルギー分野での方向転換によって、文明の深層部には新しい活力が注ぎ込まれ、さまざまな領域に新生の芽吹きがはじまる可能性が予見できる(P.98)

(贈与交換が損なわれると、経済システムが死滅に向かって歩き出す)
このことは、すでに多くの場所で現実になりはじめています。そしてそれを予感した人々のなかから、資本主義の「つぎのかたち」への模索がおこっているもの事実です。アップル社やグーグル社の成功が、そのことをはっきりと示しています。(中略)
いまや脳(心)が商品化されない広大な領域として、私たちの前に浮上しつつあります。(中略)
まだ商品化されていない、論理化できない、数量情報化できないという領域から、いかにして未知の意味やイメージを取り出してくるか。資本主義にとっての命であるイノヴェーションは、現代では脳(心)の無意識領域との境界面でしか、発生しなくなっています。「労働」によってはそれは引き出せません。適度な休暇と自由な環境のなかでしか、良いアイディア、つまり無意識からの良い贈与がおこらないということは、グーグル社の経営指針などにしめされているとおりです。
(P.137)

 
疑問点と自分へのコメント

  • 原子力については全面同意。コンピュータについては保留。正直わからない
  • エントロピーの視点からは、太陽光、風力、バイオマス、いずれも却下なのだが、どう理解すれば良いか?有限時間の中では延命措置が取れると理解すべきか?
  • マルクス主義の亡霊という論が立ったときにどう回避するか、あるいは未然にどう防ぐつもりなのか
  • 原子炉と資本主義の議論は基本的に賛同するが、「資本主義」に何を含み何を含まないのか、議論が少し粗い気がする。その切り分けが、おそらく手がかりを与えてくれると確信する
  • 著者が智慧を手にしているのかどうか、なんとも判別しかねる
  • ひとつひとつの議論は粗いし、つながりやロジックも曖昧だが、おもしろい。ということをよくよく考えること

 
関係すると思う本⇒【10B123】ビジネスに「戦略」なんていらない(平川克美)★ - 虎(牛)龍未酉2.0 (ビジネスに「戦略」なんていらない(平川克美))